「ダウンフォース」はレーシングカー・スポーツカーのグリップ力を更に高める空気の力

ダウンフォースとは早く走る為に軽くパワフルに制作されたレーシングカーをより早く走らせる為に飛行機の翼のメカニズムを応用して生み出された車体を地面に押さえつける空気の力です。ダウンフォースは車体やウイングなどのデバイスの上面と下面に流れる空気流速に意図的に差を設ける事で負圧を生み出し発生させています。ダウンフォースの研究が最も進んでいるレースカテゴリーがF1「フォーミュラーワン」であり、空気抵抗を減らしより高いダウンフォースを生み出すことが勝利のカギになると言われています。

この記事では車体を路面に吸い寄せる「ダウンフォース」という空力メカニズムについて皆様にシェアさせて頂きます。

 

 

 

1.ダウンフォースとは

ダウンフォースは飛行機の翼のメカニズムを逆転させ車体を地面に吸い寄せ押さえつける空気の力です。ダウンフォースが発生する事で車のタイヤには車重を超越する面圧がかかり高いグリップを生み出すことが可能です。

 

 

車体を地面に吸い寄せる空気の力

ダウンフォースは空気の流れを利用することで車の車体を地面に吸い寄せる力の事です。

ダウンフォースは大きな機体を浮き上がらせる飛行機の翼のメカニズムを逆に利用することで車体を地面に押さえつける空気の力です。

車体を空気の力で地面に吸い寄せることで自動車が持つ重量以上にタイヤに圧力をかけることができます。

 

 

 

ダウンフォースはタイヤに掛かる荷重を増やしてくれる

本来自動車のタイヤのグリップは車体重量によってかけられたタイヤの面圧(摩擦力)によって決まります。

つまり、本来タイヤのグリップとは車重によって引き出される上限値(摩擦係数)が決まってしまう事になります。

車重が軽ければ不利に、しかし車重が重ければ運動性能が低下します。この問題を解決してくれるものが空力によってタイヤに車重以上の面圧かけてくれるダウンフォースなのです。

 

 

 

 

2.ダウンフォースの必要性

ダウンフォースは運動性能を高めた軽量ハイパワーなレーシングカーやスポーツカーにこそ必要な空力効果です。パワフルで軽い車は高いスピードが出せますが高速域ではとても不安定になってしまうので空気の力で車体を地面に押さえつける必要があるのです。

ASMS20001号車

 

車重が軽いレーシングカーのグリップを高める

ダウンフォースの必要性や生み出された経緯はモータースポーツシーンにおけるレーシングカーの進化と共にあります。

自動車を早く走らせる為に最も効果的なチューニングが「軽量化」です。軽量化によって「加速・減速・旋回」という自動車の運動性能を飛躍的に高めることができます。

しかし、軽くなった車重では高い速度域ではタイヤへの面圧が足りず、グリップ力が足りないというジレンマも付きまといました。

ダウンフォースは軽量なレーシングカーのタイヤ面圧をより高める為に生み出された空気力学の賜物なのです。

 

 

 

速度上昇によるリフトフォース(揚力)の改善

軽くハイパワーになったレーシングカーやスポーツカーのトップスピード(最高速)はとても高い数値を示します。

しかし、高速域に到達し、スピードが高まる事に比例して車体を持ちあげる「リフトフォース(揚力)」が発生します。

高速域で発生する揚力によってタイヤのグリップ力は低下しスピードが速いのに安定感は減少するという危険な状態に陥ります。

この揚力を相殺しタイヤの面圧をより高める為にも高いスピードを誇るレーシングカーやスポーツカーにはダウンフォースは必要不可欠な存在です。

 

 

 

 

3.ダウンフォースが発生するメカニズム

車体を地面に吸い寄せるダウンフォース発生のメカニズムはシンプルです。車体その物で考えると車体の上面と下面に流れる空気流速の内、上面を遅く、下面を早く流すことでダウンフォースが生まれます。

 

 

ダウンフォースを生み出す空気の流れ

ダウンフォースは空気の流れを利用して生み出されています。具体的に言うと車体の上下に流れる空気の流速を意図的にコントロールすることで発生します。

車体上面の流速を遅くし、車体下面の流速を早めることで負圧が発生し車のボディが地面に吸い寄せられます。この空気の力がダウンフォースです。

 

 

 

ダウンフォースが発生する速度域

ダウンフォースの発生には空気の流れが必要になりますので高い速度域でのみ効果が得られます。

車体の上面と下面の流速差が大きければ大きいほど大きなダウンフォースを得有れることになりますので、スピードが高ければ高いほど効果が得られます。

一般的にダウンフォースが発生する速度域は120kmからと言われています。

 

 

 

ダウンフォースを生み出す構造とデバイス

ダウンフォースの発生に必要不可欠なことが上面と下面の流速差です。構造で考えると自動車の上面と下面、デバイスで考えるとウイングの上面と下面となります。

ボディでは上面を遅く下面を早くすることでボディその物をダウンフォースで地面に吸い寄せることが可能です。

さらにウイングやカナードといったエアロデバイスを用いることでフロントやリアといった局所的にダウンフォースを発生させることも可能なのです。

 

 

 

 

4.ダウンフォースのメリットとデメリット

空気の力で車体を地面に押さえつけるダウンフォースも良い事ばかりではありません。ダウンフォースの発生には流速差を生むための空力パーツによる抵抗「ドラッグ」があります。このドラッグは加速性能に影響を及ぼし車のトップスピードを低下させてしまいます。

FFスポーツカーコーナリング

 

 

ダウンフォース発生によって得られるメリット

ダウンフォースのメリットはスポーツカーやレーシングカーにだけに与えられる訳ではありません。車体を地面に吸い寄せる空気の力は全ての自動車にとって運動性能向上と高い安定性をもたらします。

 

自動車の運動性能向上

ダウンフォースの発生によってタイヤの面圧が向上しグリップが高まることによって得られるメリットが運動性能の向上です。

空力により更にタイヤのグリップが引き出されることで「トラクション性能・ブレーキング性能・コーナリング性能」という多くのパフォーマンスがアップします。

 

自動車の安定性向上

負圧の発生によって得られる高いタイヤのグリップとボディを吸い寄せる空気の力によって車の安定性はとても高くなります。

ダウンフォースによって加減速時も旋回時も車体が安定しているのでドライバーは高い安心感も得られます。

 

 

 

ダウンフォース発生によって得られるデメリット

空気の力で高いグリップを生み出すダウンフォースのデメリットはダウンフォースを生み出す為に必要なエアロデバイスの空気抵抗(ドラッグ)です。ドラッグによって加速性能が低下しトップスピードも伸び難くなります。シビアな見方をすればダウンフォースが失われた時の不安定な車体の挙動もデメリットと言えます。

 

空力デバイスによるドラッグ(抵抗)の発生

ボディ全体を吸い寄せる上面下面の流速変化を生む構造も、フロントのグリップを高めるためのエアロデバイスやリアのダウンフォース高めるウイングなどの局所的なエアロデバイスも流速変化を生み出す構造になっています。

車体や空力パーツの上面は意図的に流速を遅くする必要があるので抵抗になるような構造をしています。

これが空気抵抗を生み出します。昨今のF1ではドラッグを減らしより高いダウンフォースを生み出す為のエアロデバイスを風洞実験やコンピュータによるCFD(計算流体力学)を使いながら研究しています。

 

グリップ限界を超えた時のシビアな応答性

ダウンフォースは空気の力で基準値以上にタイヤのグリップを高めています。分かりやすく言えば自然なグリップではなく強制的に高められたグリップ力です。

この空力によるグリップは、車体の姿勢を乱すなど空気の力が得られなくなった場合に、瞬時にグリップを失い車体はとてもシビアな挙動を見せます。

過去行われたルマンではレーシングカー(メルセデス)が宙返りするなどの現象も起きており、不測の事態に陥った場合にはリスクが高まる事も忘れてはいけません。

 

以上で「ダウンフォース」に関する記述を終了させて頂きます。

現在ではほとんどの自動車に空気力学の賜物であるダウンフォースが採用されています。F1で磨かれた最先端のテクノロジーが私達の自動車にフィードバックされ安全な自動車造りに生かされています。

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