FFスポーツカーにマッチしたエンジン「パワーアップ」チューンの方向性

メカチューン

FFレイアウトを持つ前輪駆動車には、車体前方が重たいフロントヘビー特性があります。このフロントヘビーによるアンダーステア特性を助長しないエンジンチューニングと、トラクション性能で不利な前輪駆動でも受け止められる出力特性にチューニングすることが、FFスポーツカーにとって最良のパワーアップチューニングと言えます。

 

VTECエンジン
出典:ホンダ技研より

 

この記事では、FFレイアウトが持つ前輪駆動車のエンジンチューニングのセオリーを皆様にシェアさせて頂きます。

 

 

 

1.FF車の特性にマッチするパワー特性

エンジン出力を上げるパワーアップチューニングには、FFレイアウトの前輪駆動車にとっては注意すべきポイントがいくつか存在します。まず、駆動輪が前輪なので加速時にトラクションが失われやすいこと、そしてFFレイアウト故のフロントヘビーによるアンダーステア特性があるので、この2つのデメリットを助長せずにパワーアップを行うことが重要です。

前輪駆動車シビックタイプR出典:pixabayより

 

 

FFレイアウトが持つネガティブな特性

FFレイアウトを持つ前輪駆動車は、フロントの重量が重い「フロントヘビー」なボディバランスをを持ちます。

フロントヘビーだと、車体の前方に重心点が来る為、コーナリング時にフロントが慣性モーメントの影響を強く受け、外側に「引っ張られる/押し出される」形で車が曲がらないアンダーステア特性が表れます。

そして、コーナーの立ち上がりでは荷重がリアに移動するので前輪駆動車ではトラクションが不足しやすい状態になります。

この2つのポイントがFFレイアウトを持つ、前輪駆動車のネガティブな特徴です。さらに詳しく前輪駆動車の特徴が知りたい方は、下記の記事をご参照ください。

「FF:フロントエンジンフロントドライブ」前輪駆動車の特徴

 

 

 

FFスポーツカーに適合するパワーアップ

FF車のエンジンパワーを上げる場合、上記にある「FFレイアウトが持つネガティブ要素」に注意しながらチューニングを行う必要があります。

FFレイアウト故の弱点を助長しないようにパワーアップ特性や方法を見極めることが肝心で、コーナリングのマイナスになるようなチューニングは控えるべきです。

 

 

急激な荷重変動を起こさない出力特性

前輪駆動車はフロントタイヤに動力を伝達し、加速します。加速時は、全ての駆動方式「FF・FR・MR・RR・AWD」でリアタイヤに荷重が移動し、フロントタイヤの荷重が減ります。

つまり、前輪駆動車は加速する駆動輪の荷重が減ることになり、加速時のトラクション性能が一番不利な駆動方式なのです。

この特性を踏まえると、FFレイアウトを持つ前輪駆動車には、出力特性が急激に変動するパワーカーブを持つエンジンはトラクション性能をさらに悪化させる可能性が高いので不向きと言えます。

逆に言うと、チューニングでパワーアップを図る場合には、トルクがあり、高回転までスムーズにパワーが発揮されるフラットなパワーカーブが得られるチューニングが、トラクション性能の悪化させ難く、ベストと言えます。

 

 

アンダーステア特性を増やさないチューニング

エンジンの出力を増加させる、いわゆるパワーアップをFF車で行う場合には、フロントセクションの重量増をなるべく起こさないチューニング方法が最適です。

FFレイアウトを持つ前輪駆動車はフロントヘビー故に、コーナリング時に慣性モーメントの影響でアンダーステア特性を示します。

つまり、出力向上を狙うエンジンチューニングにおいてフロントセクションの重量増を招くチューニングを行うと、更に車体のフロントの重量増を招いてしまうい、FFレイアウトが持つアンダーステアというネガティブ要素を助長してしまうからです。

これらのFFレイアウトが持つネガを助長せずに、エンジンの出力を伸ばせるチューニングがFFスポーツを、より速くするチューニングと言えるでしょう。

 

 

 

 

 

2.エンジンパワーを上げるチューニング方法

前輪駆動車が選べるエンジンパワーアップチューニングの選択肢を大きく分けると「吸排気チューニング・NAメカチューン・過給機チューン」の3種類です。給排気チューンはエンジンの吸気と排気の効率化を図るもので、基礎的なチューニングに分類されます。メカチューンと過給機チューニングはハードなチューニングに分類され、パワーも手に入りますが、手間もコストも掛かるチューニングです。

エンジンパワーアップ出典:pixabayより

 

 

吸排気チューン

手軽にできるパワーアップチューンの一つにエンジンに対する「吸気効率」と「排気効率」を向上させる吸排気チューニングがあります。

エンジンは燃焼に酸素を必要とするため、エンジン内に多くの空気を取り入れるとパワーが出ます。そしてエンジンが燃焼した排気ガスの排出量を増加せることでエンジン回転が軽くなり回転馬力が出ます。

これらの吸排気チューニングは、本格的なエンジンチューンを行う前に、行うべきチューニングです。

 

 

吸入効率を高める吸気チューン

上記にある通り、エンジンの燃焼には酸素が必要なので、沢山の空気をエンジン内に運ぶと燃焼効率は高まり爆発力が増します。

これがパワーが上がるということで、この吸気効率を高めるために有効なチューニングが「エアクリーナーチューン」です。

量産車には純正のエアクリーナーが搭載されていますが、エンジン内部にゴミなどの異物混入を極端に抑える為、空気の通過効率が悪いエアクリーナーを使用しています。

このエアクリーナーを空気の通過効率が良い物に交換することで、エンジンへの吸気効率が高められ、パワーアップを達成する方法がエアクリーナーチューンです。

極論を言うと、エンジン内部に直接空気を導いた方がパワーは出るので、エアクリーナーを撤去し、より吸入効率を高める方法が、4連スロットルなどと呼ばれる「他連スロットルチューン」です。

 

 

排気効率を高める排気チューン

吸入効率を高めることと同時に行うべき、チューニングが排気効率を高める排気チューンです。

排気チューンとはエンジンからの排気ガスを排出する「エキゾーストマニホールド/マフラー」などの排気管を、より効率の良い物に交換するチューニング方法です。

排気チューニングが必要な理由は、入口であるエアクリーナーを効率化しても出口であるエキマニ/マフラーの排気効率が悪ければ、出口詰まってしまう状態になるため、思うように空気は入らずパワーが得られないからです。

ただし、エキマニやマフラーを交換する場合に、排気量を著しく超過するような大きなパイ数の排気管にしてしまうとトルクが失われ、ドライビングが難しいエンジン特性になってしまうので注意が必要です。

 

 

 

エンジンチューンの種類

エンジンチューニングといっても様々な方法があります。

エンジン内部に手を入れる、通称「メカチューン」と呼ばれるものから、エンジンに過給機「ターボ/スーパーチャージャー」を搭載し膨大なパワーを得るチューニングなど様々な種類が存在します。

 

 

NAメカチューン

エンジン本体に手を入れてパワーアップを行う方法を「メカチューン」と呼びます。メカチューンにも様々な方法が存在しますが、ほとんどの場合、多くのコストと手間がかかります。

メカチューン出典:pixabayより

方法としてはピストンとハイカムによって圧縮比を高めて高回転域のパワーを上げる方法やコンロッドの長さを変更してピストンのストローク量を増やし、排気量上げて低回転でのトルクとパワーを上げる方法などが代表的なメカチューンです。

そして、吸気ポートをエンジン職人やエンジンチューナーの手によって研磨する「ポート研磨」など、メカチューンの方法は多義に渡ります。

 

  • メリット
    パワーを上げる為に、エンジンに部品を追加する必要が無いので、パワーユニットの重量増が無いことです。そしてNAメカチューンの最大のメリットは、アクセルワークに即座に反応する高いエンジンレスポンスが得られることと、NAエンジン特有の素直で気持ちの良い回転フィーリングが得られることです。

 

  • デメリット
    メカチューンのデメリットと言えば、手間とコストが掛かることです。これは、お金を掛けた割には、数値としてパワーが増えないことを意味しています。
    NAメカチューンは絶対的なパワーでは無く、フィーリングという嗜好性を買うチューニングと言えるでしょう。

 

 

ターボチャージャー

元々ターボエンジンを搭載している車のブースト圧を高める方法や、より大きな風量のタービンに交換する方法、NAエンジンにターボチャージャーを搭載するなど、ターボチューンにも様々な方法があります。

ターボチャージャー出典:pixabayより

ただ、ブースト圧を上げたり、ターボチャージャーを交換するにあたって、その過給機が発揮するパワーにエンジンその物が耐えられる強度があることがターボチューンの前提条件です。

この条件さえクリアしてしまえば、ターボチャージャーによって過度に吸気された空気がエンジン内部で大きな爆発力を発揮し、膨大なパワーが得られます。

 

  • メリット
    ターボチューンのメリットは、大きなパワーが得られることです。得られるパワーの数値から考えると、最もローコストなパワーアップチューニングと言えるでしょう。

 

  • デメリット
    ターボチューンを行うことでエンジンのレスポンスが悪くなる、いわゆる「ターボラグ」が発生しやすくなることがデメリットです。
    ミスファイヤリングシステムやアンチラグシステムなどターボエンジンのデメリット解消する方法も存在しますが、実用的では無く、ターボチャージャーの寿命を短縮してしまう可能性が高いのでお勧めできません。
    そしてターボチューンには様々な補器類が必要なので、パワーユニットその物の重量が増加してしまうこともデメリットと言えます。

 

 

スーパーチャージャー

タービンを回す構造にベルトドライブを用いる過給機をスーパーチャージャーと言います。

スーパーチャージャー 出典:pixabayより

ターボチャージャーは排気ガスの風量に比例して過給圧が高まる構造を持ちますが、スーパーチャージャーはエンジンの回転をベルト駆動に伝えタービンを回すので低回転から過給圧が高い状態を保てます。

この構造の違いは、エンジンの特性にもリンクし「ターボチャージャー=高回転でのパワー・スーパーチャージャー=低回転からのパワー」という構図が成り立ちます。

 

  • メリット
    過給機でありながら、ターボチャージャーには必ず存在する「ターボラグ」が無く、高いエンジンレスポンスが得られることです。
    そして過給機なので大きなパワーを得る事も可能で、低速からトルクフルな特性も示す為、速く走ることに適したエンジンになります。

 

  • デメリット
    ターボチャージャーとは違い、ベルト駆動によってタービンを回しているので、過給機の中では重量増が一番多いことです。
    そしてベルト駆動特有の回転ノイズがエンジンサウンドに混ざることと、ターボやNAエンジンのような高回転の伸びが得られず気持ち良いエンジンフィーリングが得られないことです。

 

 

 

 

 

3.重量を増やさずパワーを増やす「NAチューン」

FFレイアウトを持つ前輪駆動車において最も適したエンジンチューニングがNAメカチューンと言えます。適している理由としては、過給機のように補器類を必要としない為、パワーユニットの重量増が無く、フロントの重量を増やさないからです。そしてNAエンジン特有のスムーズに吹け上がるエンジン特性がトラクションが不足しやすい前輪駆動車に向いているからです。

出典:pixabayより

 

 

NAメカチューンはFFレイアウトにマッチする

FFレイアウトが持つ「アンダーステア/トラクション不足」というネガティブ要素を助長しないエンジンチューニングとしてマッチングが良い方法は、NAエンジンのパワーアップを行う「メカチューン」が優れています。

基本的にメカチューンは、パワーユニットに新たに部品や補器類を追加する事が無いので、FF車のフロントヘビー特性を助長することがありません。

そして過給機のように膨大にパワーが増加するということも無いので、前輪駆動でも扱いやすいパワーアップが可能です。

 

 

フロントヘビー特性を悪化させない

上記の通り、NAエンジンのまま、パワーの底上げを行うメカチューンでは、不必要な重量増が起きにくいエンジンのチューニング方法です。

フロント重量が増えないということは、従来通りのボディバランスを維持する事が可能で、ハンドリング特性にも悪影響がありません。

逆にエンジンの重量増を招くチューニングを行うと、増加したフロントの重量が慣性モーメントの影響を強く受け、FFスポーツカーが苦手なコーナリングを更に悪化させてしまうということです。

走るステージにもよりますが、過給機チューニングでパワーが増えたとしても、重量増の影響によってコーナーでタイムロスを招く場合があるので、トータルで見るとプラスではない可能性があります。

 

 

荷重変動を起こし難いパワーフィール

NAメカチューンのエンジン特性は、FFスポーツカーにとってマッチしています。前輪駆動車は、加速時やコーナーからの立ち上がりの時に駆動輪の荷重が減りトラクションが不足しやすい駆動レイアウトです。

このFFレイアウト特性故に、膨大なパワーは受け止められず、またエンジンパワーの立ち上がりに緩急がある、フラットではないパワー特性も荷重変動を起こし、トラクションを失う原因を作るのでマッチしません。

FFスポーツカーにとって優れたエンジンとはトルクと回転馬力のバランスが良くスムーズに吹け上がる特性を持つ自然吸気「ノーマルアスピレーション」エンジンです。

 

 

 

NAエンジンをチューニングする方法

FFスポーツカーにとって良い特性を示すNAエンジンチューニングのコツは、パワーカーブに緩急を設けないことです。

つまり、高回転域だけのパワーを上げるのではなく、低回転からもスムーズにパワーが発揮され、むらなく高回転域へのパワーに繋がるようなチューニングが有効です。

低回転のパワーとトルクを得るには、排気量アップが有効で、回転馬力を上げるにはカムチューンが有効です。

 

 

排気量をアップでモアパワー/モアトルクを成し遂げる

FF車の駆動輪のトラクションを邪魔せずに、加速力を高めるには排気量アップによる低回転域のトルクとパワーアップが有効です。

排気量とはエンジン内部のコンロッドの長さによってピストンがストロークする空間の体積のことで、排気量を増やすにはストロークする量を増やす必要があります。

多くの場合、ピストンを支えるコンロッドの長さを短くすることで、ピストンの総ストローク量を稼ぎ出し、燃焼室内部の体積を増加させます。

燃焼室内の体積が増加することで燃焼室内に取り込める空気の量が増えるため、エンジンの燃焼力がアップし出力が増加します。

 

 

ハイカム/ハイコンプピストンで回転馬力を伸ばす

NAエンジンで高回転域のパワーを上げるには、燃焼室内の圧縮比を高める方法と、高回転域に合わせたカムシャフトに交換し高回転での吸気効率を適正化し回転馬力を高めます。

まず、圧縮比を高めるには、ハイコンプピストンというピストン上面に盛り上がりのある、ピストンに交換します。このピストン上面の盛り上がりによって圧縮比が高まり爆発力が増します。

そして、吸気と排気のバルブを動かしている物がカムシャフトで、カムプロフィールが高い「ハイカム」と呼ばれる物に交換すると高回転でのエンジン回転数に必要な吸気量を実現できるため、パワーが得られます。

ハイカムに交換すると低回転域でのパワーが損なわれる為、乗り難いと言われることがありますが、現代の自動車には「可変バルブタイミング機構」と呼ばれる低回転域に必要なカムと高回転に必要なカムの双方が備わっているため大きな心配は無用です。

この可変バルブタイミング機構を搭載した代表的なエンジンがホンダのVTECエンジンです。

 

 

 

 

 

4.モアパワーが欲しいなら過給機「ターボチューン」

FF車が持つネガティブ要素よりも、モアパワーを求めるのであればNAメカチューンよりも過給機チューニングの方が有効です。どれだけ時間とコストを割いてNAメカチューンを行っても、MAXパワーでは過給機チューニングには敵わないからです。そしてモアパワーを求めるにあたり、FF車にお勧めの過給機チューニングが大きなパワーを得られて、補器類が軽量なターボチューンです。

ターボエンジン 出典:pixabayより

 

 

FFの特性よりもパワーを優先するなら過給機チューン

FF車が持つトラクション不足とアンダーステア特性というネガよりもパワーが欲しい場合、もしくはパワー必要と
なるシチュエーションの場合には過給機チューニングが有効です。

絶対的なエンジン出力を発揮するにはNAエンジンのメカチューンよりも、ターボ/スーパーチャージャーという過給機を使って得られるエンジンパワーの方が圧倒的に大きいからです。

過給機チューニングが有効になるシチュエーションは、ストレートが長くトップスピードがタイムに大きく影響する「ストップ&ゴー」レイアウトを持つサーキットなどで、過給機チューニングは活かされるでしょう。

 

 

 

 

過給機の中でも重量増が最小限で済むターボチャージャー

 

FFレイアウトで過給機チューニングを採用するなら補器類の重量増が比較的少ないターボチューンがお勧めです。

ターボに比べるとスーパーチャージャーは、ベルト駆動などの必要部品が多い所が難点です。一方で、低回転からパワーカーブの大きな変動が少ないスーパーチャージャーはFF車でも扱いやすいパワーカーブを持ちます。

しかし、過給機チューニングを選択する場合、膨大なパワーが必要と考えられるので、大きなパワーが得られて重量増が少ないターボに軍配が上がると考える方が合理的です。

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